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最高裁判所第二小法廷 平成6年(あ)234号 決定 1994年7月19日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人上田誠吉の上告趣意のうち、判例違反をいう点は、所論引用の判例は、事案を異にし本件に適切でなく、その余は、単なる法令違反の主張であって、刑訴法四〇五条の上告理由に当たらない。

所論にかんがみ、職権で判断すると、本件は、被告人が、小山フェンス株式会社(代表取締役小山典生)の所有し、被告人と六親等の血族の関係にある佐々木清和の保管する現金を窃取したという事案であるところ、窃盗犯人が所有者以外の者の占有する財物を窃取した場合において、刑法二四四条一項が適用されるためには、同条一項所定の親族関係は、窃盗犯人と財物の占有者との間のみならず、所有者との間にも存することを要するものと解するのが相当であるから、これと同旨の見解に立ち、被告人と財物の所有者との間に右の親族関係が認められない本件には、同条一項後段は適用されないとした原判断は、正当である。

よって、刑訴法四一四条、三八六条一項三号、一八一条一項ただし書により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官根岸重治 裁判官中島敏次郎 裁判官大西勝也)

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